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東京地方裁判所 昭和30年(行モ)23号 決定 1955年12月19日

申立人 万木充雄

相手方 厚生大臣

訴訟代理人 森川憲明 外二名

決  定

右申立人は当裁判所に、相手方が昭和三十年八月三十一日為した申立人が設立者である高知理美容学校の理容師養成施設及び美容師養成施設としての指定を取消す処分(以下本件処分という)が違法であるとして、その取消の訴(昭和三十年(行)第九四号事件)を提起し、且つ本件処分の執行の停止を申立てたので、当裁判所は相手方の意見をきいたうえ判断するに、本件処分の執行により今後申立人設立の高知理美容学校を卒業する者が理容師美容師法所定の資格試験の受験資格を取得することができなくなる結果申立人は事実上右学校を閉鎖しなければならないであろうこと及び現に在学する生徒は他に転出することを余儀なくされるであろうことは明らかであるけれども、右学校を閉鎖することによつて蒙る申立人の損害は金銭をもつて償い得る性質のものであると認められる。また現在右学校に在学する生徒(本件処分当時在学した生徒は約二十一名であつたが、本件処分後高知県立綜合職業補導所(厚生大臣指定理容師美容師養成施設)に十一名が入所し、約十名がなお残つていることは疏明によつて一応認められる)が本件処分の執行により右学校を卒業しても理容師美容師法所定の資格試験の受験資格を取得することができなくなり、その受験資格を取得するためには新に厚生大臣指定の施設に入り、所定の期間所定の修得をしなければならなくなるのでその蒙る損害は金銭をもつて償い得ないものであることは明かであるが、右在学生の蒙る損害は申立人の蒙る損害とは異るのであつて、行政処分の執行の停止は当該申立人において償うべからざる損害を生ずる場合においてのみ許されるものと解すべきであるから右在学生の蒙る損害を斟酌することはできないものと言わねばならない。

従つて本件処分の執行により償うことのできない損害を生ずる虞れがある場合に該らないから右申立を理由がないと認め次のとおり決定する。

主文

本件申立を却下する。

(裁判官 飯山悦治 岩野徹 井関浩)

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